作家紹介 辻村唯
奈良県で作陶する辻村唯さん。
代名詞ともいうべきエメラルド・グリーンの自然釉は、多くのファンを魅了し続けています。
唯さんの工房はご自宅に併設されています。その暮らしぶり(しつらい)もとても美しく、なんて達者な生活者なのだろうかと、感銘を受けました。あの自然釉は、こうした営みをする人の手からこそ、生み出されるものなのだなあと、得心したものです。
唯さんの作品は、作品として自立した強度をもちながら、徹底的に生活の道具でもあります。作品の美しさばかりに眼がいきがちですが、作品に手をふれてみると、その事がわかります。一見するとざらざらとした表面のようですが、窯出しのあとに丁寧に磨かれており、それ故、口当たりはすべすべなめらかでやさしい。
それはまさに用の美として、生活のなかで育まれるためのうつわなのです。
1975年奈良県生まれ。幼少期からやきものに触れ育ち、93年に父・辻村史朗に師事し、本格的に陶芸の世界に入る。2000年奈良県水間にて築窯し独立。03年大阪阪急百貨店にて初個展、以後各地で個展を開催。作品はメトロポリタン美術館に収蔵されている。