作家紹介 若林幸恵
川越に工房を構える、漆芸作家である若林幸恵さん。
若林さんの作品は成型において、手刳りのものと、ろくろ挽きのものがあります。
漆器といってまず思い浮かべるのは輪島塗のようなきらびやかなものか、寺院で使われるようなシンプルなものでしょう。
ところで、若林さんの漆器はすこしちがっていて、縄文時代の漆器をモチーフにしています(縄文時代には漆の基本的な技法というのは確立されていたようです)。
つまり、大陸(仏教)由来でもなく、武家由来でもない、もうひとつの漆の歴史についての眼差しを、若林さんの作品は持っている。
中世・近世を飛び越えたタイムスケールで漆を捉える若林さんだからこそ、手刳りの作品のみならず、挽き物においても、たくましさが宿っています。
人間と自然の関係が作り上げた奇跡的なマテリアルとしての漆。
漆を、特定の文化的枠組みを超えて、自然の恵みとして捉えなおす。
若林さんの漆は、野性的な気品に満ちあふれています。