和綿。日本で古来より栽培されてきた綿花。
わけても、伯州綿はシルクのような光沢をもち、しなやかでふわふわ。なんとも気持ちがいいい。
繊維が太く、短いため、紡績機械では加工が難しい素材。
だから和綿は手作業で糸を紡ぐ。
手で紡ぐ糸は、手のリズムにしたがってゆらぎ、濃淡を生じ、空気を含む。
その立体感と味わい深さは、洋綿の既製服の平板な繊維に慣れきった感覚からすると、ほんとうに驚くべき芳醇さだ。
糸そのものからして、こんなにも違う。その糸によって織られた反物は、綿=安価でありふれたもの、という認識をふんわりと覆す。
絹の着物ももちろんいい。けれども和綿は、私達の風土と肌に、この上なくよく馴染む。
絢爛ではない、芯を持ったラグジュアリーを身にまといたいならば、和綿の着物を強くおすすめしたい。
大地に抱かれているような心地よさと安心につつまれたいならば、
古くて新しい衣を着たいならば、
あなたは和綿の反物に出会うべきだ。
和綿の着物は、21世紀に真の復興を遂げる。そしてそれは、茶の湯をも一段と深い場所へ連れていくだろう。
離岸で和綿を、そして、野衣という屋号において稀有な生き方をする作家・永井泉さんを、そう遠くないうちにご紹介させていただきたいと思う。