コレクション: 石井義久

朴訥とした、言葉少な気な作行。しかし手に触れて持ってみると、決して重くはないのに、どっしりとした土のたくましさを感じる。

石井さんの作品は、まず第一に健康的である。天然ということではない、なにか友達からもらったプレゼントを大事に手のひらに包み持ってその温もりを確かめているかのように、うつわというものを大事にしている気配がある。

土くれひとつ無駄にはしない。なぜならそれは僕がもらった大事な宝物なのだから。見かけ上の素朴さの向こうに、そのような滋味深き愛情を感じる。

離岸で取り扱いさせていただいている作家はみな、素材を大事にしている。が、石井さんの場合はそういうこととも少し違う。土が「贈り物」と書いたが、むしろそれ自体が友であるかのように石井さんの手は動く。したがって、その手付きには少し他者に触れているという遠慮のようなものがみられることも事実である。しかしその心優しさを技量の無さと勘違いしてはいけない。それはすでに技術とは別の技術なのである。

古作にも陶工が作った「素朴な・朴訥な・おおらかな」うつわというのはある。しかし、石井さんほど温かい作行の作品には、滅多に出会えないだろう。実はこの味わいはかすかなものだ。大仰に温かいのではない。なぜなら石井義久は〈素朴派〉ではないからであり、品性として、あるいは本性として飾りがないだけなのであるから。装飾を削ぎ落としているのでもない。そのような〈ミニマル〉を志向しているのではない。単に、得難く、真っ当に無-装なのである。