原料の性質とお手入れについて

作品は、私達とは別のしかたで生きています。ですから、丁寧に扱ったり、大切にすると、その分がご褒「美」として訪れます。

ですから、気持ちよく楽しく使える方法・注意点を、以下おおまかにご紹介します。

 

使用前  使用後 保管
陶器 水に漬ける 洗剤で洗い すぐ乾かす 同士で
炻器 水に漬ける 陶器に同じ タワシ可 同士で
磁器 なし 洗う 同士で
漆器 なし 陶器に同じ 柔和なスポンジを使用 光と乾燥を避ける

 

すべてに共通していえるのは、電子レンジ、オーブン、直火、食洗機の使用は原則避けることです。

一部可なものもあるかもしれませんが、基本的に一点物については、これらの使用による破損はもちろん、目にみえない劣化も、不可逆のことであり、取り返しがつきません。金継ぎという文化もありますが、時間もお金もかかりますし、強度も元よりは落ちます。

 

陶器〉は10%ほどの吸水率をもつものもあると言われています。陶器は構造的にすき間が多く、総じて水分を吸い込みやすいといえるでしょう。そして水を含んだままにしておくと、カビたり、臭いがついたりすることもあります。

そのため、使用後はすぐに洗って水分を拭き取ること=乾かすことが大事です。つけ置きする場合も一晩などせず、10~30分くらいにとどめてください。料理を載せたままにすることも避けてください。

初めてお使いになる場合は、事前に目止めをしていただくと、シミなどが防ぎやすくなります。目止めは陶器の隙間を米の研ぎ汁などで埋める作業ですが、そのやり方は様々なので、ご自分でお調べ頂き、行ってください。

ただし目止めは必ずしなければならないわけではありません。また、目止めは却ってカビの原因となるという説もあります。作家や陶房からの指示書があれば、それに従うのがよいでしょう。

使用のたび、予め短時間(5分くらい)水に漬けておくことでも、汚れにくくなります。目止めよりは良くも悪くも効能は低いかもしれませんが、僕は面倒なので、せいぜいさっと水であらうくらいです。使う前に水を染み込ませて、汚れ(食材など)の浸透をブロックするイメージです。

また、粉引などは陶器の中でも特に汚れやすいものです。使っていくうちにある程度変化していくことは覚悟の上でご購入、ご使用ください。

「汚れ」も、感じ方は人それぞれ(茶渋をあえて落とさず、味わいとして愛好する者もいます)なので、一律の基準はありません。一般に、「経年変化」と言われる場合、使い込んで味が出てくるというような良い意味で使われることが多いでしょう。

自分で使うなら、自分が気持ちよく使えるのであればそれでよく、人にお出しするものであるなら、その人の嗜好を把握した上でお出しすればよいでしょう。ただし「汚れ」ればよごれるほど、それは趣味性の高いうつわになっていくと考えてください。万人受けするものではなくなります。

自分の美の基準を絶対のものとして他人に押し付けるのではなく、いつも頭の片隅に一般的な感覚というのを想定しておくとよいでしょう。

短時間ならば電子レンジは可。ただし金継ぎしたものは不可。大切に思うなら、電子レンジを使うことは避けたほうがよろしいでしょう。

オーブン、食洗機、直火は、商品ページに断りがある場合を除いて不可

金彩がしてあるものには酸性の食品は載せないようにしてください。変色する可能性があります。

食器用洗剤で落ちないような汚れ・シミ・カビがついた場合は、塩でこする、大きいナベに入れて煮沸する、台所用の漂白剤で洗浄するなどの方法があります。ただ、いずれも完璧に汚れやカビを排除できるかは不透明ですので、そこまでの深刻な事態にならないように、まずは日々の手入れをしていただくのが肝要です。

漂白剤を使用した場合、においが残ることがありますので、よくすすぎをしてください。酸素系のほうがいいと思います。どうしてもとれないカビは、塩素系でもいいかもしれません。が、すすぎは、更に念入りにして、染み込んだ薬剤などを完全に除去してから使いましょう。

 

磁器〉 においやよごれの問題など、少なくともメンテナンス性に関していえば磁器はもっとも優秀です。何も気にしないでお使いいただけます。

吸湿性がほぼ0%のため、臭ったり、カビたりしません。茶渋なども比較的簡単に落とせるでしょう。

 陶器同様、金継ぎや金彩など金属使用のものはレンジ不可です。

オーブンも、特に記載のあるものを除いて避けてください。

 

炻器(せっき)〉 簡単にいうと、いわゆる焼締めのうつわです。釉薬をかけない素焼きであっても、高温で焼き締めると意外と吸水性はありません。日本の有名な陶芸産地でいうと、六古窯の備前焼、信楽焼、越前焼、丹波焼が炻器に相当するといわれています。

焼締めは素地の長石が高温で溶けることにより隙間を埋めるので、比較的吸水性が少ないと言われています。そのため土管などにも使われてきました。

汚れやシミても、粉引のように内部に残らないので、経年変化はいい感じになりやすいとも言われております。なるべくきれいに使いたい方は、目止めするか、使う前に水につけておくなどの処置をするといいと思います。

洗浄はタワシで行うと、だんだん素地が滑らかになっていく、と聞きます。

 

 〈漆器〉は、普段からガンガンどしどし使っていただけるものです。ハレの日のものではなく、日常でつかってこそ、漆器の良さがわかってきます。個人的には白米と味噌汁(汁もの)は黒の漆の椀に限るとおもっています、ここだけの話ですが。そしてお箸も漆で。応量器まで行かずとも、まず白米を漆の椀で召し上がっていただきたい。めちゃいいです。

気をつけるポイントは2点。

1. 漆は光に弱い

2. 漆は乾燥に弱い

この2点に気をつけてください。つまり収納場所ですね。部屋の中でも暗いところ、紫外線の当たらない扉の中などにしまうといいでしょう。蛍光灯など人工の照明でも長期間にわたってさらされ続けると変色します。(ただし漆の変色は色の度合いが変わるといった感じで、褪色して汚くなるような具合ではありませんが。)

また、湿気は上空よりも地表近くにたまるので、相対的に低いところにしまうなどの工夫もいいでしょう。

一番いいのは、毎日使って、使ったらすぐに拭いてあげること。

漆はリネン100%のクロスなど、繊維のでてこないもので拭くといいいです。食べた後、すぐ洗ってすぐ拭いて片付けるって、案外気持ちいいです。

タワシなど硬いものでは洗わないでください。柔らかいスポンジで洗ってください。

中性洗剤は油汚れがなければ使う必要はありません。漆器は洗剤をつかわずともきれいになります。(ちなみに食器用洗剤で「中性」の表示のあるものは意外と少ない?です。僕がつかっているキュキュットクリア除菌は弱酸性の表示です。ただ、弱酸性でもスポンジにつけ水を含ませて使うと中性になるようです。ですので、一般的な台所用洗剤であれば、中性でも弱酸性でも、あまり気にしなくて良いと思います。)

 

〉(継ぎしたもの)は、電子レンジは不可です。